「角」さんは「鹿」と同じ lù?台湾ニュースで知る、名字になると読み方が変わる漢字
日本語でも、「小鳥遊(たかなし)」や「四月一日(わたぬき)」など、漢字を見ただけではなかなか読めない名字がありますよね。
台湾でも、普段よく知っている漢字なのに、名字になるといつもとは違う発音になる漢字があります。
台湾の民視新聞で紹介されたのは、自分の名字の読み方について、戸政事務所で思いがけないことを知らされた男性のエピソードでした。
読み方が分からない時、不安な時に聞くフレーズも載せています。
音声は音読さんを利用しています。
長年「角(jiǎo)」さんだと思っていたら……
番組によると、新北市に住む「角」姓の男性は、人生の大半を、自分の名字は
角 jiǎo(ㄐㄧㄠˇ)
と読むと思って過ごしてきたそうです。
周囲の人からも、名字にちなんで「角頭」というあだ名で呼ばれていたのだとか。
ところが7年前、戸籍関係の手続きをするため「戶政事務所」を訪れた際、担当職員から思いがけないことを告げられました。
名字として使われる場合は「jiǎo」ではなく、
lù(ㄌㄨˋ)
と読み、「鹿(lù)」と同じ発音なのだというのです。
自分の名字を何十年も違う読み方だと思っていた、というだけでも驚きですが、このニュースを見て「角に lù という読み方があるの?」と思った台湾華語学習者も多いのではないでしょうか。
「角=lù」については少し注意
台湾教育部の『重編國語辭典修訂本』を確認すると、「角」には
- jiǎo(ㄐㄧㄠˇ)
- jué(ㄐㄩㄝˊ)
- lù(ㄌㄨˋ)
という読みが掲載されています。
ただし、lù の説明は「角里」の項目を参照する形になっています。
さらに「角里(lù lǐ)」は地名および複姓として掲載されています。
「仇」「區」「查」「句」も名字になると読み方が変わる
番組では、ほかにも読み間違えやすい名字が紹介されていました。
台湾教育部の辞典でも、名字として次の読み方が確認できます。
| 名字 | 普段よく見る読み方 | 名字での読み方 | 注音 | 覚え方 |
|---|---|---|---|---|
| 仇 | chóu:仇恨 | qiú | ㄑㄧㄡˊ | 球 qiú と同じ |
| 區 | qū:地區 | ōu | ㄡ | 歐 ōu と同じ |
| 查 | chá:檢查 | zhā | ㄓㄚ | 「チャー」ではなく「ジャー」に近い |
| 句 | jù:句子 | gōu | ㄍㄡ | 勾 gōu と同じ |
「仇」さんは chóu ではなく qiú
「仇」は、
仇恨 chóuhèn(恨み)
などでは chóu(ㄔㄡˊ)と読みます。
ところが名字では、
仇 qiú(ㄑㄧㄡˊ)
です。
「籃球(バスケットボール)」の「球 qiú」と同じ発音、と覚えると分かりやすいですね。
「仇」という漢字から「恨み」の chóu を連想してしまうと、名字を読み間違えてしまいます。
「區」さんは qū ではなく ōu
台湾旅行をしていると、非常によく目にするのが「區」です。
信義區、萬華區、中山區などの「區」は、
qū(ㄑㄩ)
と読みます。
ところが名字の「區」は、
ōu(ㄡ)
です。
「歐陽」の「歐 ōu」と同じ発音です。
「區先生」をつい「Qū xiānshēng」と読みたくなりますが、名字なら「Ōu xiānshēng」になります。
金庸の本名「查良鏞」も chá ではない
「查」は、
檢查 jiǎnchá(検査する)
調查 diàochá(調査する)
などでおなじみなので、「chá」と覚えている人が多い漢字です。
ところが名字になると、
查 zhā(ㄓㄚ)
と読みます。
有名な例が、武侠小説の大家・金庸です。
金庸の本名は
查良鏞 Zhā Liángyōng
なので、「Chá Liángyōng」ではありません。
中国語をある程度勉強している人ほど、逆に「chá」と読んでしまいそうな名字です。
「句」さんは jù ではなく gōu
「句子(文・センテンス)」の「句」は通常、
jù(ㄐㄩˋ)
と読みます。
しかし名字では、
gōu(ㄍㄡ)
という読みがあります。
教育部辞典には、春秋時代の越王「句踐」を例として、「句」が姓の場合には gōu と読むことが掲載されています。
「勾選(チェックを入れる)」の「勾 gōu」と同じ発音、と考えると覚えやすいでしょう。
まだある!名字になると読み方が変わる漢字
ここからは番組で紹介されたものではありませんが、教育部の辞典を見てみると、ほかにも名字として意外な読み方をする漢字があります。
台湾華語を勉強している人なら、こちらも覚えておくと面白いかもしれません。
| 名字 | 普段よく見る読み | 名字での読み | 注音 |
|---|---|---|---|
| 單 | dān | shàn | ㄕㄢˋ |
| 解 | jiě | xiè | ㄒㄧㄝˋ |
| 任 | rèn | rén | ㄖㄣˊ |
| 華 | huá | huà | ㄏㄨㄚˋ |
單さんは dān ではなく shàn
「簡單(簡単)」や「單獨(一人で)」では、
dān(ㄉㄢ)
と読む「單」。
名字では、
shàn(ㄕㄢˋ)
という読みが教育部辞典に掲載されています。
つまり「單先生」なら「Shàn xiānshēng」です。
ちなみに「單」はさらに、「單于」という言葉では chán(ㄔㄢˊ)という別の読み方もあります。
一文字で3種類の発音を持つ、なかなか手強い漢字です。
解さんは jiě ではなく xiè
「理解」「解決」「解釋」などの「解」は、通常、
jiě(ㄐㄧㄝˇ)
と読むことが多いですよね。
しかし名字では、
xiè(ㄒㄧㄝˋ)
という読みがあります。
教育部辞典でも、春秋時代の人物「解狐」を例に、xiè の読みで姓として掲載されています。
任さんは rèn ではなく rén
「任務」「責任」「任職」などでは、
rèn(ㄖㄣˋ)
と読む「任」。
ところが名字の場合には、
rén(ㄖㄣˊ)
という読みがあります。
声調まで変わるので、中国語を学習している人にとっては特に間違えやすいタイプです。
華さんは huá ではなく huà
「中華」「華語」の「華」は、
huá(ㄏㄨㄚˊ)
で覚えている人が多いと思います。
しかし名字の場合には、
huà(ㄏㄨㄚˋ)
という読みが教育部辞典に掲載されています。
辞典では、後漢末期の名医「華佗」が例として挙げられています。
台湾華語の「破音字」を知ると、人名を見るのが面白くなる
このように、同じ漢字でも意味や使われ方によって発音が変わるものがあります。
台湾では、このような漢字について「破音字」という言葉を見聞きすることがあります。
台湾華語を勉強していると、
「この漢字は知っているから読める」
と思ってしまいがちですが、人名や地名になると思いがけない読み方が登場することがあります。
今回の
仇 chóu → 姓なら qiú
區 qū → 姓なら ōu
查 chá → 姓なら zhā
句 jù → 姓なら gōu
などは、その典型的な例といえるでしょう。
読み方が分からなければ、本人に聞いてみよう
では、台湾で知り合った人の名字が読めなかったら、どうすればよいのでしょうか。
そんなときは、無理に推測せず本人に聞いてしまうのが一番確実です。

請問,您的姓怎麼念?
Qǐngwèn, nín de xìng zěnme niàn
ㄑㄧㄥˇ ㄨㄣˋ,ㄋㄧㄣˊ ˙ㄉㄜ ㄒㄧㄥˋ ㄗㄣˇ ˙ㄇㄜ ㄋㄧㄢˋ
「失礼ですが、名字はどのようにお読みしますか?」
もう少しカジュアルな場面なら、

你的姓怎麼念?
Nǐ de xìng zěnme niàn
ㄋㄧˇ ˙ㄉㄜ ㄒㄧㄥˋ ㄗㄣˇ ˙ㄇㄜ ㄋㄧㄢˋ?
「あなたの名字はどう読むの?」
でもOKです。
辞書に載っている読み方があっても、人名については本人が使っている読み方を確認するのが一番確実です。
漢字を知っているからこそ面白い、台湾の名字
日本人にとって台湾華語は、漢字を見れば意味を推測できることが多い言語です。
一方で、漢字を知っているからこそ、
「これは絶対こう読むはず」
と思い込んでしまうこともあります。
今回の「角」さんのニュースは、そんな漢字の奥深さを感じさせてくれる話題でした。
「仇」「區」「查」「句」、さらに「單」「解」「任」「華」。
台湾で人の名前を見かけたとき、
「もしかすると、いつもの読み方とは違うかも?」
と少し意識してみると、台湾華語の世界がまた一つ面白く見えてくるかもしれません。

