台湾旅行で知っておきたい「暗黙の了解」|台湾の文化とマナーを尊重して旅を楽しもう
台湾を旅行していると、日本と似ているようで少し違う習慣に出会うことがあります。
「これって座ってもいいのかな?」
「ご馳走すると言われたら、素直にお願いしていい?」
「台湾では、もらったプレゼントをその場で開けないって本当?」
法律や明確なルールとして決められていることもあれば、台湾で暮らす人たちの間で自然と共有されてきた「暗黙の了解」のようなものもあります。
台湾政府の就業金卡(Taiwan Employment Gold Card)の公式サイトには、外国人向けに「臺灣社交禮儀」という台湾の基本的なビジネスマナーを紹介したページがあります。
そこには名刺交換から食事、贈り物、身振りまで、台湾で人と付き合う際のさまざまなマナーが紹介されています。
ただし、この資料は主にビジネスやフォーマルな交流を想定したもので、掲載されているすべての項目が現在の台湾の日常生活にそのまま当てはまるわけではありません。
そこで今回は、この資料を参考にしながら、台湾を旅行する日本人にも知っておいてほしい文化やマナー、そして「台湾ではこうすると自然」という暗黙の了解について見ていきます。
その時々に役立つフレーズも掲載しています。
音声は音読さんを利用しています。
台湾の「暗黙の了解」は絶対的なルールではない
最初に覚えておきたいのは、文化的なマナーと法律・施設のルールは別物だということです。
たとえばMRTの禁止区域で飲食をしないことは、単なるマナーではなくルールです。
一方、「ご馳走すると言われたときに一度は自分も払う意思を示す」「贈り物を両手で受け取る」といったものは、人間関係を円滑にするための文化的な習慣です。
さらに同じ台湾でも、年齢、地域、家庭、友人関係などによって感覚は異なります。
「台湾では絶対にこうしなければならない」と考えるのではなく、
「こういう文化的背景があることを知っておこう」
くらいに捉えるのがよいと思います。
1.MRTでは飲み物も口にしない

台湾旅行で特に注意したいのがMRTです。
台北MRTなどでは、禁止区域内での飲食について明確な規定があります。
日本では電車の中でペットボトルのお茶や水を飲むことがありますが、その感覚で台湾のMRTに乗らないよう注意しましょう。
「食事をしなければ大丈夫」ではなく、飲み物にも注意が必要です。
また、ホームでは乗車位置に並び、降りる人を先に通してから乗車します。
台湾華語には、
先下後上
Xiān xià hòu shàng.
ㄒㄧㄢ ㄒㄧㄚˋ ㄏㄡˋ ㄕㄤˋ
「先に降りて、あとから乗る」
という分かりやすい表現があります。
日本と共通する部分も多いので、現地の人の流れに合わせればそれほど難しくありません。
2.「優先席」は必要としている人のための席

台湾の公共交通機関には優先席があります。
以前は「博愛座」という名称が広く使われていましたが、制度変更によって「優先席」という名称になり、年齢や外見だけではなく「実際に席を必要としている人」を重視する考え方が明確になっています。
旅行中に大切なのは、「若いから座ってはいけない」「高齢者だから必ず譲らなければならない」と外見だけで判断することではありません。
妊娠初期、体調不良、けが、障害など、外からは分からない事情を抱えている人もいます。
必要としている人がいたら譲る。
これは日本でも台湾でも大切にしたい考え方です。
3.ご馳走すると言われたら、一度は「私も払います」
台湾人の友人や知人と食事をしたとき、少し戸惑うかもしれないのが会計です。
台湾就業金卡の「臺灣社交禮儀」では、宴席について「招待した側が会計を支払い、客側が支払う意思を示すのは礼儀だが、強く主張する必要はない」という趣旨の説明があります。
つまり、相手から

今天我請你。
「今日は私がご馳走するよ」
Jīntiān wǒ qǐng nǐ
ㄐㄧㄣ ㄊㄧㄢ ㄨㄛˇ ㄑㄧㄥˇ ㄋㄧˇ
と言われたとき、当然のように「ありがとう!」と任せてしまうより、一度はこちらも払う意思を見せると丁寧です。
それでも相手が「私が払うよ」と言ってくれたら、無理に伝票を奪い合う必要はありません。
そんなときに覚えておきたいのが、

好,那謝謝你!下次換我請你。
じゃあ、ありがとう!次は私がご馳走しますね。
Hǎo, nà xièxie nǐ! Xiàcì huàn wǒ qǐng nǐ
ㄏㄠˇ,ㄋㄚˋ ㄒㄧㄝˋ ㄒㄧㄝ˙ ㄋㄧˇ!
ㄒㄧㄚˋ ㄘˋ ㄏㄨㄢˋ ㄨㄛˇ ㄑㄧㄥˇ ㄋㄧˇ
という一言です。
台湾では「誰が払うか」でちょっとしたやり取りになることがありますが、それも人間関係を大切にする文化の一つと考えると面白いですね。
もちろん、若い友人同士などでは割り勘にすることもあります。相手との関係や状況に合わせることが大切です。
4.大皿料理では「自分の料理」と思わない

台湾では、円卓を囲んで何品もの料理をみんなで取り分けて食べる機会があります。
日本人同士でレストランに行くと「私はこれ」「あなたはこれ」と一人一品を注文することがありますが、台湾料理の宴席では、大皿の料理をみんなで楽しむスタイルが一般的です。
台湾就業金卡の資料でも、宴席では主賓が最初に料理を味わったり、ホストが客の皿に料理を取り分けたりする習慣が紹介されています。
ただし、これは宴席での話です。
牛肉麵、便當、小吃など、一人一品で食べる料理もたくさんあります。
「台湾では何でもシェアする」と覚えるのではなく、円卓や宴席では周囲の様子を見ながら料理を取る、と考えておけばよいでしょう。
5.箸をご飯に突き刺さない
台湾で食事をするとき、覚えておきたいのが箸の扱いです。
食事の途中で箸を置きたいからといって、
ご飯の上に箸を垂直に突き刺す
ことは避けます。
台湾就業金卡のマナー紹介でも、箸をご飯茶碗に垂直に立てないよう明記されています。
日本にも同様の習慣があるため、日本人には理解しやすいマナーではないでしょうか。
食べ終わったら箸置きやテーブル上の適切な場所に揃えて置けば大丈夫です。
6.台湾でプレゼントを渡したら「不用啦!」と言われた!どうする?
台湾人の友人に日本のお土産を渡したとき、

不用啦!不用啦!
いいのに!そんなのいらないよ!
Bú yòng la! Bú yòng la!
ㄅㄨˊ ㄩㄥˋ ㄌㄚ!ㄅㄨˊ ㄩㄥˋ ㄌㄚ!
と言われることがあります。
ここで本当に持って帰る必要があるとは限りません。
台湾就業金卡の資料では、贈り物を受け取る側が礼儀として婉曲に辞退する場合があり、その場合は丁寧にもう一度勧めるというマナーが紹介されています。
たとえば、

沒關係,這是給你的。
大丈夫、これはあなたへのものだから。
Méiguānxi, zhè shì gěi nǐ de
ㄇㄟˊ ㄍㄨㄢ ㄒㄧ,ㄓㄜˋ ㄕˋ ㄍㄟˇ ㄋㄧˇ ㄉㄜ˙
と伝えてみてもいいでしょう。
もちろん、本当に受け取れない事情がある可能性もあります。相手がはっきり断っている場合に、いつまでも押しつける必要はありません。
大切なのは、言葉だけで機械的に判断するのではなく、相手の様子を見ることです。
7.プレゼントは両手で渡すと丁寧

台湾の伝統的な礼儀では、プレゼントなどを両手で渡し、受け取る側も両手で受け取ることが丁寧とされています。
これは名刺などにも共通しています。
旅行中、台湾人の知人に日本から持ってきたお土産を渡すなら、片手でポンと渡すより、
「どうぞ」
という気持ちを込めて両手で渡す。
それだけでも十分です。
相手から何かをいただいたときも、両手を添えて

謝謝!
ありがとう!
Xièxie!
ㄒㄧㄝˋ ㄒㄧㄝ˙
と受け取れば、とても自然です。
8.プレゼントをもらっても、その場で開けないことがある
日本では、
「開けてもいい?」
と言って、その場でプレゼントを開けることがあります。
台湾就業金卡の伝統的なマナー紹介では、贈り物は贈った人の前では開けないとされています。
ただし、これは現在の台湾の日常生活で必ず守られているルールというわけではありません。
親しい友人同士なら、その場で開けて喜ぶことも当然あります。
そのため、「台湾では絶対にプレゼントをその場で開けてはいけない」と理解するより、
フォーマルな場では、すぐに開封しないという伝統的な礼儀もある
と知っておくとよいでしょう。
9.「吃飽了嗎?」は本気で食事内容を尋ねているとは限らない
台湾華語を勉強している人にとって特に面白いのが、

你吃飽了嗎?
Nǐ chī bǎo le ma?
ㄋㄧˇ ㄔ ㄅㄠˇ ㄌㄜ ㄇㄚ˙
という表現です。
直訳すると、
「お腹いっぱい食べましたか?」
となります。
しかし、伝統的には相手を気遣う挨拶として使われてきた表現でもあります。
台湾就業金卡の資料でも、礼儀的な挨拶として「你吃飽了嗎」が紹介されています。
台湾華語は、単語と文法だけを覚えていると不思議に感じる表現がたくさんあります。
その言葉が使われる文化的背景まで知ると、台湾華語がもっと面白くなりますね。
10.家族について聞かれることがある
「結婚しているの?」
「子どもは何人?」
「娘さんは何歳?」
日本では、初対面の人には少し聞きにくいと感じる質問もあります。
台湾就業金卡の資料では、「家庭は台湾文化の中心」であることから、相手の家族について尋ねることが礼儀の一つとして紹介されています。
台湾人から家族について尋ねられたとき、日本人が感じる「ずいぶんプライベートなことを聞くんだな」という感覚とは少し違い、相手への関心や親しみから聞いていることもあります。
とはいえ、これは誰に何を聞いてもいいということではありません。
台湾でもプライバシーに対する考え方には個人差・世代差があります。
答えたくないことまで無理に答える必要はありません。
11.人や物を指すときは、手全体で示すと丁寧

台湾就業金卡の資料では、人差し指一本で人を指すことを避け、五本の指を揃えて方向を示す方が礼儀正しいと紹介されています。
たとえばお店で、
「あの人に聞けばいいですか?」
と示すときも、人の顔を人差し指で直接指すより、
手のひら全体で「こちらの方」というように示す
方が丁寧です。
日本でも人を指差すことを失礼と感じる場合がありますので、比較的取り入れやすいマナーです。
12.「台湾ではこうする」と決めつけないことも大切
台湾政府の資料を読んでいると、
「男性は脚を組まない」
「異性への愛情を公共の場で表現しない」
「贈り物は相手の前で開けない」
など、現在の日常生活では必ずしも一律には当てはまらないと思われる項目も出てきます。
これは、今回参考にした「臺灣社交禮儀」が、もともと外国人向けに台湾の基本的なビジネスマナーを説明した資料であることとも関係しています。
文化は時代とともに変わります。
さらに、台湾に暮らす約2,300万人全員が同じ価値観を持っているわけでもありません。
若い世代と年配の世代、台北などの都市部と地方、仕事上の付き合いと親しい友人同士でも、当然違いがあります。
だからこそ、
「台湾人は○○する」
と決めつけるのではなく、
「台湾には、こんな考え方や習慣があるんだ」
と知っておくことが大切なのではないでしょうか。
台湾の文化を知ると、旅行がもっと楽しくなる
海外旅行では、「自分たちは旅行者だから」と考えてしまうことがあります。
でも、私たちにとっては数日間の旅行先でも、そこは誰かが毎日生活している場所です。
日本と違う習慣に出会ったとき、
「変わっている」
と判断するのではなく、
「どうしてこうするんだろう?」
と少し立ち止まってみる。
そこから、その土地の歴史や人との付き合い方、言葉の背景が見えてくることがあります。
そして台湾の文化を知っておくことは、台湾の人たちのためだけではありません。
「これはやっても大丈夫かな?」
「相手がこう言ったのはどういう意味だろう?」
と旅行中に迷うことが減り、私たち自身も台湾で過ごしやすくなります。
台湾の文化やマナーを尊重しながら、お互いが気持ちよく過ごす。
そんな気持ちを持って台湾を訪れれば、観光地を見るだけでは分からなかった台湾の魅力にも、きっと出会えるのではないでしょうか。
参考資料
台湾就業金卡(Taiwan Employment Gold Card)「臺灣社交禮儀」
※同ページは台湾における基本的な「商務禮儀」を外国人向けに紹介した資料です。
本記事では、同資料を参考にしながら、旅行者にも関係する内容を中心に紹介しています。文化的な習慣には世代・地域・個人による違いがあります。

